ヴァイオリンとヴァイオリン音楽



第三楽章 ヴァイオリニスト


(Mr。ビーハイブ楽師の話題メモ帳)

(その1)ヴァイオリン音楽の黎明期

 ヴァイオリン(以下Vn)音楽については、楽器の項でも述べたように、祖形としてあるフィドルの 進化によるものであろうと考えられる。従って音楽そのものは主としてダンスや歌の伴奏など民衆の 音楽として使われていたものが、宮廷の音楽に使われ始めた為に変化をしたものと考えられる。

 Vnが宮廷の音楽として初めて取り入れられたのは、16世紀の作曲家ルカ・マレンツィオ(ca1553〜 1599)がメディチ家の結婚式の為に作曲した「シンフォニア(1589)」が最初だとされている。  ここではオーケストラにVnが使われている。従ってアンドレア・アマティ(ca1505〜1577)が Vnを完成した頃にはVnはまだ、民衆のダンス音楽、つまりフィドル的な使い方をされていたものと 考えられる。 同じ楽器であるVnとフィドルの演奏形態の進路が大きく変わったのは、Vnが宮廷音楽に 使われ出した頃が、所謂分岐点であったのではないかと考えられる。

 アンドレア・アマティが他界したのがca1577、マレンツィオがシンフォニアを書いたのが1589で あるので、アマティの生存中は彼の制作したVnもフィドルとして演奏されていたものと考えられる。
 そしてVnが独奏楽器として用いられた楽曲は、イタリアの作曲家、チーマ(Cima、Gian・Paolo; ca1570〜?)の作曲したVn一挺と通奏低音、及びVn2挺と通奏低音、の為の6曲のソナタ(それぞれ ソロソナタとトリオソナタの編成・1610ミラノで出版)が最初であろうと考えられている。
 従ってアンドレア・アマティの没後30年、ストラディヴァリの生まれる約20年前に初めてVnが 独奏楽器として扱われたと云うことになる。

 また最初にVnの為の協奏曲を書いたのはトレッリ(Torelli、Giuseppe・1658〜1709)であり、 トレッリの作曲したコンチェルト・ムジカーレ集(1698)の中の2曲は独奏Vnの為の協奏曲である。
 またトレッリは楽器コンチェルトの様式を確立した人物と言われている。

 この頃のアントニオ・ストラディヴァリは脂の乗ってきた時期でもあり、これらの協奏曲が アマティの楽器で演奏されたのか、あるいはストラディヴァリの楽器で演奏されたものか、詮索を すれば、なお興味深いものと思われる。

2。Vn奏法の黎明期「基本奏法の開拓者達」

前項で述べた様に、Vnは16世紀末に独奏楽器として初めて認められ、作品が作られたが、 その頃からVnの奏法についての模索が始まる。
最初に大きく貢献をしたのはマリーニ(Marini、Biagio1597〜1665)ファリーナ(C・Farina〜 ca1637)と云われている。
 彼らは運弓法、重音奏法、ピチカート、等々主要な奏法を試みているが、その他のVn奏者も競って 奏法を研究したものと考えられ、17世紀の中葉には、ほぼ基本的な奏法が確立されている。

3。楽曲様式の確立に伴うVn音楽の地位の向上。

17世紀の後半に入ると独奏ソナタ形式による楽曲が

  レグレンツィ(Legrenzi、Giovanni 1626〜1690)
  カッツアーティ(Cazzati、Maurizio ca1620〜1677)
  ヴィターリ(Vitali、Giovannni Battista 1632〜1692)
  ボノンチーニ (Bononcini、Giovanni Battista 1670〜1755)
  バッサーニ(Bassani、 Giovanni Battista ca1657〜1716)

等によって創作され、Vn音楽の様式の確立に貢献した。17世紀の末には、

  コレッリ(Corelli、Arcangero 1653〜1712)によるコンチェルト・グロッソ や
  アルビノーニ(Albinoni、Tomaso 1671〜1750)
  トレッり(Torelli、Giusepe 1658〜1709)
  ヴィヴァルディ(Vivaldi、Antonio 1678〜1741)

らによって独奏コンチェルト等、合奏に於けるVn音楽の新たな地位を確立させた。

 この様にVnの製作が、イタリアで隆盛を極めたと同様に17世紀末〜18世紀初頭にかけては、 Vn音楽に於ける指導的地位を持つVn音楽の作曲家、演奏家もイタリア各地から多く輩出した。

  テッサリーニ(Tessarini、Carlo 1690〜1765)
  ボンポルティ(Bonporti、 Francesco Antonio 1672〜1749)
  マンフレディーニ(Manfredini、Francesco Maria ca1688〜ca1748)
  ダラバコorダル・アバコ(Dall' Abaco、Evariso Felice1675〜1742)
  ロカテルリ(Locatelli、Pietro Antonio 1695〜1764)

以上コレッリの弟子。

  ヴェラチーニ(Veracini、Francesco Maria 1690〜1768)
  ポルポラ(Porpora、 Nicola Antonio1686〜1768ナポリ生)
  ドウランテ(Durante、 Francesco 1684〜1755ナポリ)
  レオ(Leo、Leonardo 1694〜1744サン・ヴィトー生)
  ペルコレージ(Pergolesi、 Giovanni Battista 1710〜1736ナポリ生)
  ソーミス(Somis、 Giovanni Battista1686〜1763)プニャーニの師
  プニヤーニ(Pugnani、Giulio Gaetano1731〜1798トリノ生)
  タルティーニ(Tartini、Giuseppe1692〜1770ピラノ生)

 これらの中で特に功績の大きかったのはロカテルリとタルティーニであり、彼らがVnの奏法 (技巧)をより高度に発展させたと言われている。

4、Vn奏法の発展に寄与した主要人物

   以下、数回に渡って17世紀から年代順に各時代におけるヴァイオリンの巨匠(ヴィルトゥーゾ)を 述べる。


  *********** ヴァイオリン(Vn)は本当に不可思議な楽器である!*******

平成14年7月23日  ***編集責任・錦生如雪***


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